あやしやあんどん
　学校へ着いたサトリは、静かに席に着いた。そして、何をするわけでもなく、ただじっと外を見つめていた。

　サトリの席は一番後ろの窓側。死神と呼ばれるサトリには、喋る友達はいなかった。友達がいないということをサトリは気にしたことはない。
　別にいじめられているというわけでもない。ただ、サトリが人との干渉を避けていたのだ。

　そんなサトリに興味を持った人物が面白半分でサトリに近づいて来た。


「ねぇ、死神て呼ばれてるのは本当？」

「・・・・・」


　彼の名前は、大島裕太。明るく元気の良いクラスメイトだった。
　サトリは、チラリと裕太の方を見たが何も言わず再び外を見つめる。


「俺、大島裕太。俺がいつ死ぬのか当ててよ」


　彼が冗談で放った言葉が教室に響く。教室にいた生徒が静まり返り、視線をサトリたちの方へ向ける。
　サトリは裕太を再び見る。
　サトリが口を開こうとした時、裕太を呼ぶ女子の声が響く。


「裕太、やめなよ！その子、マジでヤバイんだから！」


　裕太を止めたのは、裕太の幼馴染みの日草香苗だった。裕太の腕を掴み、サトリを睨み付ける。


「あんた、変なこと言わないでよ！今度、シロみたいに死んだヤツが出たら、許さないから！」


　香苗はサトリにそう言うと裕太と共に行ってしまった。教室の中で話が再開される。そのすべての会話の内容はサトリの話だった。
　サトリは思い出す。
　自分が死神と呼ばれた訳を。それは、日草香苗と裕太の幼馴染みの、白川の死だった。

　彼も裕太と同じように興味本意でサトリに自分がいつ死ぬのかを聞いてきた。
　クラス中が笑い、サトリをバカにする中でサトリは静かに口を開いた。

　白川の消えようとする命の灯火を見つめ、嘘偽りなく、本当のことを伝えた。


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