陽だまりのなかで
少女がゆっくりと眼を開けると、目の前は白い天井が飛び込んできた。
『天国?』
重い頭で思い付いた言葉を口にすると、足元で男性の声がした。
「んなわけあるか。ここは、病院だ」
少女は、慌てて起き上がり、眼を大きくさせ驚いている。
『えっ。病院?』
「そんなに驚くこと無いだろう?」
男性は、温かいミルクティーを少女に渡した。
少女はそれを受けとるとため息を吐き窓の外を見た。
「死なせてくれなかったんですね」
「自分の目の前で、人が死ぬのはもう見たくないからな」
男性は椅子に座り少女を見つめた。
『正義のヒーローごっこのつもりですか?』
少女は、苛立ちを込めて男性にぶつけた。
「いや。もうそんなお子さまじゃあない」
「じゃあ、、」
「君が思ってることは、全部否定する。」
男性は椅子から立ち上がり、真っ正面から少女を見ていた。
「でも、君に興味が出てきたのはあるかもな」
『はぁ?馬鹿じゃあないの!ナンパなんて、、、』
男性は、生徒手帳を少女に見せながらにっこりと胡散臭い笑みを見せている。
『初めましてじゃあないよなぁ。二年三組の神崎美弥。お前まだ俺の事気づかないのかよ』
美弥は、固まってしまった。
そう、彼は美弥の通っている私立高校のクラスの担任で物理の教師である小笠原理斗(リヒト)だったのだ。美弥は物理と彼の事が苦手なのだ。なぜか口調まで変わってるし、、
けれども周りは格好いいとか、優しいと言われていた。美弥は専ら美形は苦手だし、何を考えているか分からない。不気味に感じていた。しかしここは、得意のあれで逃げるしかない。もう駄目かもしれないと思ったが、美弥は、学校で見せているいい子のふりを慌ててにした。
「昨日は、すみませんでした。助けてくれてありがとうございます」
今度は理斗が固まった。しかしすぐに吹き出した。
「お前って馬鹿なの?」
余計な一言が美弥の苛立ちに油を注いだ。
『馬鹿?!馬鹿ってなんなの?勝手に助けておいて?!死にたかったのに!!』
「神崎。お前、うるせぇよ。ここ病院だぞ」
頭をかきながらため息を吐く。
『昨日も言ったけどなぁ、簡単に死ぬとか言うな。怒るぞ』
学校とは違う強い口調に美弥は唇を噛んだ。
「まぁ。俺は、いい子のお前よりも今の方が好きだけど、、」
そう言ってドアを閉めて病室から出ていった。
『ばっかじゃあないの?!何?あれ言い捨て?』
美弥は顔を真っ赤にして叫んでいた。