君をひたすら傷つけて
「籍を入れたら、デートしましょ。美味しいものを食べて、洋服も見たいな。この頃、事務所で事務処理ばかりしているから、今度のトレンドの動向も知りたいし」

 話しながら、徐々に本題から逸れる気がする。最初は子どものことで、次は仕事のことで、実際に篠崎さんのスタイリングの仕事もリズから引き継がないといけないから、トレンド動向は知りたかった。

「服を見るなら、雅の服だよ」

 やんわりと慎哉さんは軌道修正に掛かる。

「そうね。そろそろ体型も変わるから、服も買わないと。籍を入れたら、色々手続きもしないといけないから、忙しくなって、少しは実感するかも」

「結婚式のことも考えよう。雅はやっぱり教会での式がいいの?それともレストランとかでする人前式??」

 慎哉さんの口から結婚式という言葉が出てきて驚いた。妊娠しているし、結婚式をするということさえ、頭の中からすっぽりと抜け落ちていた。それに教会とかレストランとか、するのが前提の慎哉さんの言葉に驚いた。

「結婚式するの?」

「そのつもりだよ。しないという選択肢はなかったが、雅はしたくないのか?」

「妊娠しているから、しないと思っていた」

「関係ないだろ。俺は雅のウエディングドレス姿を見たい。別にすぐに式場が取れるわけでもないから、子どもが生まれて落ち着いてからでもいい。きちんとしたいと思っている。雅は嫌か?」

「そんなことないけど、何となく、結婚式をするなんて思ってなかったから」
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