君をひたすら傷つけて
「うん。さやかも頑張って。私も頑張る」


 さやかには義哉とのことを話してなかった。いつか、私の気持ちの整理がついた時に話すことがあるかもしれないけど、今は自分の胸の中だけに留める。激しい痛みが胸を貫くけど、これは自分で選んだ道。手を最後の最後まで携えると。

 卒業式は講堂で行われた。順番に入場し、順番に卒業証書を授与される。

 思い返してみれば、私の高校生活は楽しいものだった。部活に入ることはなかったけど、友達にも恵まれたし、親友のさやかにも出会った。そして、恋もした。義哉に出会えた幸せを心に思いながら卒業式を終えたのだった。

「なんか卒業式ってあっと言う間ね」

「毎年のことだし、先生たちも慣れているからそう思うのかも。雅はクラスの打ち上げに行くの?」

「ううん。今日は止めとく」

 さやかと並んで校門を出たのは生徒も殆ど帰宅していて、残っている生徒は僅かだった。静かになった後者を後に二人で帰ることにした。こんな風に二人で並んでこの道を帰るのは最後になると思うと、急に感傷が押し寄せてきた。二人で後ろを振り返り緑の中に美しく浮かぶ校舎を見つめる。私とさやかが過ごした時間はかけがえのないものだった。


「楽しかったね。色々」

「うん」

「大学が決まったらまた会おうね」

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