君をひたすら傷つけて
 グラスワインと炭酸水で乾杯をして、二人でテレビを見ながら時間を過ごした。テレビでは有名な映画が流れていて、慎哉さんと私はとりとめのない話をしながら、テレビを見ていた。ワインを飲み終わった慎哉さんはニッコリと笑った。

「そろそろ寝ようか。先にお風呂に入ってきたらいい。疲れただろ」

「うん」

「お風呂にお湯を溜めてくるから、雅は準備して」

「わかった。ありがとう」

 私は慎哉さんがバスルームに消えてから、リズが準備してくれたスーツケースを開いて、ホッとした。入っていた着替えは普通の物で、セクシーな物でもなければ、可愛いフリル満点なものでもない。私の普段使っているようなものばかりだった。悪戯の好きなリズのことだから、私が困るようなものを入れているかもしれないと思ったけど、そんなことはなかった。

 下着の着替えと基礎化粧。部屋においてあるバスローブを準備しているうちにバスタブにお湯が溜まったようだった。

「準備出来たよ。さすがに湯量が多くて、アッと言う間にバスタブがいっぱいになったよ」

「ありがとう。ねえ、一緒に入る?」

 ちょっとした悪戯心だった。あまりにも冷静な慎哉さんを見ていて、マンションでの生活の延長のような気がしたから言ってみた。少し驚く顔が見たいと思う悪戯心だった。

「わかった。じゃ、準備してくるから、雅が先に入っていて」

「え?」

「そんなに吃驚した顔をする必要ないだろ。雅が誘ってくれたから、拒む必要ないし」
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