君をひたすら傷つけて
 駅のコンコースでさやかと別れ、私は義哉の待つ病院に向かうことにした。電車に乗るとすぐに携帯が震えた。さやかからのメールだった。

『私はいつでも雅の味方だから、それだけは忘れないでね。高取くんによろしく』

 私はさやかには義哉とのことを話してなかった。先生も卒業式の前に義哉は転校したと伝えるだけに留まっていた。たったこれだけのメールだったけどさやかの優しさに気持ちに唇を噛んだ。さやかには何も言ってないのに、私と義哉のことを少なからず知っているようだった。


 今は義哉のことを何も話せないけど、いつかきっと全てを話せる時が来るだろう。


 病院に行くと、今日も私のことを待ってくれる義哉がいる。卒業式を終わらせてきた私に優しく微笑んだ。来ないでと言ったのに待っていてくれたのは間違いない。


「今日は卒業式だから来ないかと思ったよ。打ち上げとかなかったの?」

「なんとなく行く気にならなかったから」

「そっか」

 義哉はそういうとベッドの下に置いてある紙袋を取ると私に差し出したのだった。中には小さなピンクのガーベラの花束が入っている。丸く作られた花束はとっても可愛かった。
< 109 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop