君をひたすら傷つけて

君にひたすら愛されて

 私がテレビの画面を見つめている間に慎哉さんはバスルームから出て来ると、私の姿がソファにあるのを見て、足早にやってくるとソファに座り、私の身体を抱き寄せた。包み込むように抱き寄せると耳元で囁いた。

「身体冷えてる。だから、ベッドに入っているように言ったのに」

「テレビ見ていたの」

 慎哉さんは私の身体を抱き上げると、有無を言わさず私の身体をベッドの中に入れた。そして、優しく私の頬に手を寄せると、ゆっくりと撫でた。

「ちょっと水を取ってくるから」

 そういうと私をベッドの中に置いたまま、慎哉さんは冷蔵庫の中から、二本のペットボトルの水を持って戻ってくるとベッドサイドのテーブルに私の分を置き、自分は勢いよく水を飲んだ。上下する咽喉を見ながら、慎哉さんがいつもとは違うホテルのローブを着ているのに気づいた。胸元の合わせ目からは素肌が見えていた。

「雅が飲まないのか」

「飲む」

 私は身体を起こして、ペットボトルに手を伸ばそうとすると、すっと慎哉さんが手を伸ばし、キャップを開け、私に差し出してくれた。

「ありがと」

 あまりに驚きすぎて、私はバスルームから出て水を飲むことさえも忘れていた。喉の渇きを忘れるほど、私は慎哉さんが仕事を休むつもりだというのが衝撃だった。喉を流れる冷たい水が少し私の心を落ち着けさせてくれた。

 飲み終わって、フッと息を吐くと、手に持っていたペットボトルは慎哉さんによって取り上げられ、テーブルの上に置かれたと同時に私の唇には慎哉さんの唇が重ねられ、静かにベッドに沈められた。

 そして、静かに間接照明の明かりが落とされた。
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