君をひたすら傷つけて
「卒業おめでとう」

 来ないでと言いながらも花束を用意してくれていた。嬉しい反面、少しだけ悲しいと思う。もしも私が来なかったらどうしたのだろう。この花はどこに行ったのだろう。
 

「ありがとう。とっても綺麗。それに可愛い。これって義哉が用意してくれたの?」

「そうだよ。雅のイメージで注文したんだ。本当は自分で店に行って花を選びたかったけど、今は外に出れないしね。でも、花屋さんのセンスが良かったのか、僕の中の雅のイメージ通りで嬉しかったんだ」

「私ってこんなイメージなの?」

「うん。雅には可愛い花が似合う」

 可愛い花が似合うとか言われたことはなかった。でも、義哉がそんな風に思ってくれているということは嬉しい。

「義哉。聞いてもいい?」

「ん?」

「私のこと好き?」

「うん。好きだよ。大事だと思うし傷つけたくないとも思う」

「本当に?」

「うん。本当。雅と出会えて本当に良かったと思っている」


 その優しい言葉が私を後押しする。私の願いを義哉はどう思うだろうか?


「卒業記念にお願いがあるの?」

「俺に出来ることなら何でも」


 それは前々から思っていたこと。でも、中々言い出せなかったことだった。
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