君をひたすら傷つけて
「リズが動くと面倒なことになりそうだけど、リズなしでは考えられないわ。でも、この教会。とっても素敵。教会で大事な人に包まれて結婚式をするのが夢だった。でも、一年後、夢じゃなくなるのね」

「ここでいいのか?」

「ここがいいわ。大事な人に見守られながらなのね」

 二人で祭壇まで歩いて行くと光の中で眩いイエス様を見つめた。

「雅。ここで結婚式をしよう。そして、幸せになろう」

「今も幸せだけど……」

「もっとだよ。雅は幸せにもう少し貪欲になっていい。人の事ばかりではなく、自分の幸せを考えて欲しい。俺は幸せそうに笑う雅の傍で生きていきたい。病める時も健やかなる時も……雅を愛すると誓うよ」

 そういって、慎哉さんは私の身体を抱き寄せると軽く自分の唇を重ねた。それはまるで祭壇の前で愛を誓うようなキスだった。ドレスも何もないけど、私の前には厳かな光に包まれたような気がした。
        
「ちょっとフライングだな」

「ちょっとって、一年のフライングはフライングっていうのかしら?」

 そういって笑う私を慎哉さんはキュッと抱きしめた。その腕の温もりに溢れるばかりの愛情を感じた。この手に守られ、この手と一緒に私は前を向いて歩く。これからの道が必ずしも平たんだとは限らない。でも、二人で手を取り合って、歩いて行く。

「一緒に幸せになろう」

 その囁くような甘い言葉に私は頷いた。

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