君をひたすら傷つけて
エピローグ

あなたと二人で

 出産を終わらせた私は一年前に行った教会で結婚式を挙げることになった。慎哉さんの言うとおりにドレスはリズの監修で準備され、ヘアメイクもリズとエマによって施される。私が知る限り、最高水準の美容技術は今までに最高傑作と言われるほどの奇跡を起こした。

「なんか別人みたい?」

「綺麗だから。さ、ドレス着ないと」

 一つ前のデザインの方が私に似合うと言って、リズが持ってきたドレスは世界有数のデザイナーのディーの先シーズンの作品でオートクチュールコレクションの中の一枚だった。レンタル料が払えないから無理と言ったけど、一緒に働いていたよしみで大いなるご厚意に預かることになった。

「これ本当にいいの?」

「いいに決まってる。これはディーから雅への結婚プレゼントよ。きっと」

 ディーの作品だから、奇抜なデザインではないかと心配したけど、心配するようなことはなく、シンプルな飾り気の少ないドレスだった。でも、リズが言うには、飾りが少ないからこそ、最高の縫製技術が必要だと言っていた。知識の薄い私から見ても、最高級のドレスで自分が結婚式をするとは思わなかった。

 シンプルなドレスとは反面で、ベールはロングベールでこじんまりとした教会の入り口まで続くのではないかと言うほどの長さだった。

 私のベールを持つのを手伝ってくれるのは橘さんの息子の叶くんが一人でしてくれることになっていた。あまりに長すぎるために小さな子どもでは無理だということで、11歳の叶くんに白羽の矢が立った。一年前よりもっと綺麗な男の子になった叶くんは屈託のない笑顔を私に向けた。
< 1,101 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop