君をひたすら傷つけて
 ベッドに背中を預け座っている義哉は困ったような表情を浮かべた。困らせるのは分かっていたけど、きっと今言わないと私は後悔してしまうと思った。自分で行動を起こさないと叶えられない思いを口にしながら、私は自分の頬が染まって行くのが分かる。耳もきっと真っ赤になっているだろう。

 誰よりも好きな義哉をもっと近くで感じたい。そう思うことが義哉にとっての戸惑いとなっているのも分かる。身体に大きな負担を掛けるかもしれない。それでも私は義哉に抱かれたいと思った。

「何を言っているか分かっているの?そんなのはダメに決まっているだろ」


 義哉の答えは想像通りだった。

 唇を重ねるだけでは足りないくらいに愛が溢れ、残された時間がないからこそ私は勇気を振り絞る。足は震えるし、顔も熱い。真っ赤になっていると思う。それでも勇気をもって顔を上げると義哉は困ったような顔をしていた。そんな困った顔をして欲しいわけじゃない。

 私はもっと深く愛されたかった。
 それが我が儘だとしても……。

「私は本気よ。こんなこと冗談で言えない」


「雅をこれ以上傷つけたくない」


 義哉の振り絞るような声が私の勇気を削り落として行く。そんな気がした。
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