君をひたすら傷つけて
 義哉のハッキリとした拒絶は私の心を苦しめた。どうしようもない思いが私の身体中を駆け巡り、私は自分で自分を持て余してしまっていた。今までの私はこんなにも望んだことがなかった。私が生まれて初めて深く望んだことは私の心を理由に拒絶された。

 涙がぽろぽろと零れ、あまりに泣き過ぎているので私は病院からの帰り道にある公園で少し時間を潰すことにした。このまま家に帰ったらきっとお母さんが心配してしまう。公園のブランコに座りゆっくりと漕ぎ出した。すると冷たい風が頬を撫で、涙を乾かすことは出来ないけど、跡にはしてくれた。

 まだ春になり切れないこの時期は身を切られるような寒さに肌がチクチクする。


 揺れるブランコに乗りながら鉛色の空を見つめていると、今にも雨粒を落としそうに鉛色は濃さを増していく。鉛色で雨粒を落としそうの空は私の心の様だと思った。少しでも下を見れば、やっと乾いて後になった筋にまた涙が零れそうだった。


 義哉が私の言葉をそのまま受け入れてくれるとは思ってなかった。でも、私の思いが強ければ受け入れてくれるのではないかと思っていた。受け入れて貰えるものだと疑ってなかった。でも、答えは拒絶だった。
 

「ここにいたんだね。これを家まで届けるつもりだったんだ」


 そう声を掛けてきたのは義哉のお兄さんで手には白い紙袋が持たれている。その中にはさっき義哉から貰ったガーベラの花束が入っている。病室を飛び出してきた私は花束を忘れたままだった。


「すみません。忘れてました」
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