君をひたすら傷つけて
「それはいいけど、病室で義哉に会ったら、すごく落ち込んでいて辛そうだった。どうも身体は大丈夫みたいだけど、ベッドの上にこの紙袋はあるし、藤堂さんは居ないし」

 お兄さんは私の横のブランコに座ると身体を揺らす。スーツ姿のお兄さんが子どもが遊ぶようなブランコが似合わない。似合うと言われても喜べないと思うけど…。


「今日、卒業式でした。で、終わった後に義哉の病室に来て、私の我が儘を聞いて貰えなくて言い合いにはなりました」

「藤堂さんと義哉が言い合いだなんて珍しいね。このところ義哉と仲良くしていると思っていたけど」


「抱いて欲しいと言って断られただけです。はっきり拒絶されました。それが喧嘩の原因です」

 お兄さんは余程驚いたのか、ガシャンと音を立てブランコを止めると私を見つめた。何か言おうとしているようには見えるけど、言葉を探しているのか、驚きの余りに言葉を失ったのかとさえ思える驚き振りだった。


 こんなことをお兄さんに言うのはおかしいと自分でも分かっている。でも、拒絶されたことで私は傷ついていた。私がどれだけの覚悟を持って義哉にあの言葉を口にしたか分かってない。


「なんでそんなことを言ったの?」


「どうしようもないくらいに好きだからです」


 答えは簡単『好き』だから…それだけだった。
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