君をひたすら傷つけて
「好きって凄いな。女の子にそこまで言わせるんだから」

「本気なんだね」

「そうでないと言いません」

 お兄さんは私から視線を逸らすと鉛色の空を見上げブランコを揺らす。そして、一言呟いた。白い息が空に舞うように昇って行った。


「ありがとう」

「え?」


「義哉のことを大事にして貰えると兄としては嬉しい。でも、客観的に見ると義哉の方に分があると思う。義哉は藤堂さんのことを本当に大事にしているのだと思うよ。だから、藤堂さんも義哉の気持ちを汲んでくれると嬉しい。忘れた方がいい」

 模範解答だと思う。でも、それは模範解答であって私の答えとは違う。私の心は私にしか分からない。

「忘れるって言ってすぐに忘れられるくらいのことだったら、こんな恥ずかしいことはいいません。義哉の気持ちを汲むって。それは兄として私では義哉の相手としてダメと言うことですか?義哉に時間が残ってないのは分かっています。でも、だからその中で一番になりたいんです。一番近くに行って義哉を抱きしめてあげたいんです。好きで好きで…でも、私と義哉に未来がないのなら、残された一瞬でも私は全部欲しいんです」
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