君をひたすら傷つけて
 私は義哉の病気のことを詳しくは知らない。見た目には普通なのにもう時間が残されてないという。自分の運命を受け入れる義哉はいくら頑張ってもまだ子ども。絶対に怖いと思う。そんな義哉を抱きしめてあげたいと思った。一番近くで愛したいと思った。

 
 義哉の言葉に傷つき、お兄さんの言葉に傷つき…。半ば八つ当たりのような言葉とともに涙を零す。頬を伝う涙が止まらない。すると、お兄さんはブランコから降りて、私の前にそっと座り優しい瞳を見せた。スーツのポケットからハンカチを出すと、そっと頬に触れさせ、涙を吸い取っていく。


「ダメじゃないよ。全然。義哉を大事に思ってくれて本当にありがとう。それしか言葉がないよ。藤堂さんと義哉の関係に私は何も言わないから。義哉がどうするか分からないけど、義哉が決めたことは私が叶えさせるよ」

「ありがとうございます。ありがとうございます」


 そう小さくつぶやく私にお兄さんは子どもをあやすようにポンポンと頭を撫でたのだった。そして、優しい瞳を私に見せた。


「もう何も言わないから。私は藤堂さんの味方だよ」


 そんな言葉をお兄さんは公園の入り口まで行くと、自動販売機で何かを買い、そっとそれを私に渡すのだった。私の手に握らせられたのは…砂糖とミルクがたっぷりのカフェオレだった。

「身体が冷えると大変だから、よかったら飲みなさい」
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