君をひたすら傷つけて
 触れ合う唇の熱さにドキドキが増えていく。それでも幸せが溢れるのを感じ。その唇の隙間から思いを溢れさせる。ゆっくりと唇を離すと義哉はギュッと抱きしめてくれた。

「義哉が好きなの」

「ん。僕も好きだよ」

 そんな甘い言葉の後に見つめると義哉の瞳の中には顔を赤くした私が映っていた。

「ドキドキしすぎて恥ずかしい」

「それは僕も一緒だから」


 義哉はそういうと私を見つめ、もう一度唇を重ねたのだった。甘い恋の味は私を蕩かせていく。残された時間が少ないとしても私は最後の最後まで義哉の傍に居ると誓った。

「そろそろ行かないと」

「うん。行きたくないかな」

「行かせたくないけど、行かなきゃ。明日も雅が来るのを待ってるから」

「本当?」

「いつも待っていたんだよ」

「うん」

「雅が好きだし、一緒に居たいから待ってる」


 この日から明らかに義哉の私に対する態度は変わった。今まで、私との距離を縮めることに躊躇しているのを感じてはいたけど今は私を受け入れようとしてくれている。


 それは次の日、病院に行った時から違っていた。私が病室に入ると義哉はニッコリと笑い掛けてくる。いつも穏やかに笑ってはいたけど、今日はいつもよりも綺麗な微笑みで…。私はというとドキドキしてしまい、余りの義哉の魅力に足が止まる。この素敵な人が私の彼。

 そう思うと込み上げる思いが溢れる。

「雅が来るのを待っていたよ」

「本当?」

「嘘なんか雅にはつかないよ」
< 126 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop