君をひたすら傷つけて
「私も義哉に会いたかった。体調はどう?」

「今日は朝から調子はいいよ。雅の数学の勉強が終わってから、中庭を散歩しようかとさえ思うくらいなんだ。だから、今日は数学を終わらせてから、塾までの時間、十分くらいかもしれないけど、雅と一緒に中庭を散歩したいんだ」


 いつもベッドから出る気配のなかった義哉が今日は自分から外に出てみようとしている。そんな前向きの姿が嬉しいと思った。体力もつけば身体も元気になるだろうし、また、初めて会った時のように自分で動けるようになるだろう。そんな奇跡を夢見る私がいる。真実を知ってはいてもそれを自分の中で分かっていても淡い期待を抱いてしまう。

「いいの?身体は大丈夫なの?」

「朝から調子はいいしね。雅と一緒に中庭を歩くのもいいだろ」」

「それってデートのお誘い?」

 私が義哉の顔を覗きこむように言うと、義哉は顔を少し染めながら、ニッコリと笑ったのだった。


「うん。デートのお誘い。ここの病院には外に出ないでもゆっくり出来る中庭があるからそこに行こう。ベンチくらいしかないけど、雅と出掛けたい気分なんだ」

「うん」

「さ、数学からだよ」


 数学の問題をいつも通り解いてから病院の中庭に向かった。
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