君をひたすら傷つけて
「こんなに甘かった?ココアって?」

 このココアのメーカーは濃厚な味と甘さで有名なものだった。甘さの中にもコクもあり美味しいとは思うけど、普通のココアを飲みなれている人からすると甘いのかもしれない。

 でも、ココアの甘さにホッとした。横には義哉もいて本当に楽しい。

久しぶりに口にするココアは思ったよりも甘い。でも、甘さの中にコクがあって…。美味しいと思う。濃厚な味に気持ちが緩む。


 こういうのが息抜きっていうのかな?

 受験が迫っているのに、私は義哉のおかげでこんなにも穏やかな気持ちでいれる。力を入れるべきところと、力を抜かないといけない場所がある。今は身体から力を抜く場所なのだろう。


「甘いの苦手だった?」

「そんなことないけど、甘いなって」

「このメーカーのは普通のよりも濃厚な味だし、甘さも際立っていると思うよ」

「雅もココアみたいに甘かったらいいのに」

「苦手だもん。甘えるのって」

「ほら、こうやって、頭はここね」

 義哉は私の肩を抱き寄せると自分の肩に頭を乗せるようにと指差す。

「恥ずかしいよ」

「可愛い彼女に拒否られる僕の方が恥ずかしいよ」


 私は義哉の肩に自分の頭を乗せると義哉はそっと私の肩を抱き寄せてゆっくりとココアを一緒に飲む。時間が止ればいいのにと何度も心の中で思うほど私は幸せだった。
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