君をひたすら傷つけて
 ずっと義哉の傍に居ると決めた私なのに改まった表情に胸がキュッとなる。息が止まりそうになるほどの時間を私は義哉の言葉を待った。時間にしたらきっと数秒。でも、私はものすごく長く感じた。話があると改まって言われると義哉と付き合い出して間の無い私には良い方に考えることが出来なかった。好きになって、義哉との気持ちが近づいた分、少しのことが怖くなる。

 義哉はゆっくりと息を吐くと真剣に私の方を見つめ、また息を吐いてから…。自分の心を言葉にするのを怖がるかのようだった。そして、数秒後、義哉は私の方をしっかりと見つめた。


「雅の二次試験が終わった後に僕は一日だけ外泊をさせて貰えるようにしたんだ。そんなに遠くには行けないけど二人で卒業旅行に行こうか?雅が一緒に行きたいと思ってくれたらなんだけど」


 義哉の思いつめたように言った言葉は私が想像もしてないようなものだった。好きな人と一緒に卒業旅行に行くなんて私は無理だと思っていたし、そんなことを考えもしなかった。義哉の身体のことを考えると一緒に出掛けることさえ無理だと思っていた。


 私の初めてになって欲しいという気持ちは一度振られている。でも、一緒に過ごすということ意味は…義哉が外した視線にある。私の我が儘と言っていいほどの望みを義哉は叶えてくれようとしていた。それがどれだけの負担を義哉に掛けるのかなんとなく分かる。

「雅が好きなんだ」

 義哉の決意にも似た言葉だった。
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