君をひたすら傷つけて
「どこに行くかは雅も考えて。僕も考える」

「うん。嬉しい。本当に一緒に行けるんだね」

「雅と一緒に居たいだけだから、どこでもいいんだけどね」


 義哉が一日だけ病院から出られるのは私の受験の終わった後で合格発表の前だった。私はスケジュール帳の少し先の日付の下に青いペンでハートのマークを書いた。本当はピンクのペンで書きたかったけど、それは少し恥ずかしくて私は青のボールペンで最初は〇を書くだけにしようと思った。でも、その〇をグルグルと塗りつぶし、小さなハートマークにした。

 義哉と一緒に卒業旅行に行く日。
 私が義哉の一番近くに行く日。

 怖くて恥ずかしくて、でも、きっと幸せな一日になる。

 

 受験の後に大きなご褒美が待っているかと思うと嬉しくて、つい顔が笑ってしまう。そんな嬉しそうな私を見つめる義哉は、私よりももっと幸せそうな微笑みを浮かべていた。


「雅。手が止まっている。今は受験のことだけ考えて」


 それは受験の前の日だった。最後の追い込みになる日で、塾に行く前に私はいつものように義哉のベッドに座り勉強をしていた。最後の最後まで数学が一番のネックで分からない問題と一つ一つ丁寧に問題を解いている。でも、明日の受験が終わると義哉との卒業旅行が待っていると思うと顔が笑ってしまう。
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