君をひたすら傷つけて
「今度の旅行のことを考えてしまうのって現実逃避なのかも。だって、明日が受験日だし、数学はまだ分からないものがあるし。もう走って逃げたいくらい」

「そんなこと言ってないで頑張ろうよ。雅なら大丈夫。このところ、数学の問題もスムーズに解けるようになったし、ここまで来たら最後まで頑張ろう」

「だって数学苦手なのは義哉も知っているでしょ。もう、本当に嫌い」

 義哉との旅行のことを考えていたと素直に言えない私は数学のせいにする。頭に浮かぶのはスケジュール帳のブルーのハートマークだった。後、数日で旅行に行くことになっている。


「苦手っていうけどいつも綺麗に解けているよ。明日の試験は絶対に頑張れると思う。受かるよ」

「凄い断言だね。でも、義哉がそう言うならそんな気がする」

「うん。僕が真剣に教えたしね。実際に雅の成績は確実に伸びてる。それとこれは明日会場に持って行ってくれる?」

 義哉は自分のベッドの横の棚から小さな袋を取り出した。真っ白な紙の袋には朱色の印刷があって、学業祈願で有名な神社の物だった。袋の中には朱色の袋のお守りが入っていて、もちろん学業祈願と刺繍が施されている。

「これ。私に?」

「うん。兄さんに買ってきて貰って、僕が一週間毎日祈ってたから効果あるよ」


 義哉が私のことを思い、受験に合格出来るように祈ってくれていたことが嬉しい。このお守りを持って明日の受験に臨む。綺麗な花をあしらったお守りは古風な可愛らしさを出していた。
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