君をひたすら傷つけて
「雅…愛している。誰よりも」

「私も義哉を愛してる。明日は頑張ってくるね。義哉に教えて貰った数学を頑張るから」


「応援している。終わったら会いに来てくれる?」

「会いにくるよ。遅くなっても会いにくるよ」

「雅を待ってるよ。雅が来たら一緒に旅行の計画を立てよう」

「うん。楽しみにしてる」


 義哉はもう一度私の唇に自分の唇とそっと重ねた。静かな病室で義哉の心臓の音と、私の心臓の音だけが響いているようで恥かしいけど、とっても幸せだった。

「じゃ、塾に行くね。義哉。また明日」

「うん。また明日」


 病院を出ると耳が熱かった。義哉の声がいつも以上に艶めかしく感じてしまった。恋をしている。その実感を体中に響かせて…。私は塾への道を急ぐ、着いたら始まるのは最後の追い込みだった。鬼気迫る雰囲気はさっきまでの温もりを一気に吹き飛ばすほどだった。

『義哉。私、頑張るからね』


 ここまで来たら、最後の最後まで頑張る。それしかないと思った。

 受験の日は私の人生の分岐点になる一日に違いない。今までずっと義哉に数学を教えて貰っていた。その成果をここで発揮できればと思う。

 塾からの帰り道。

 私は既に星がチラチラ見える中、家までの道を歩きながら思ったのは…。

 義哉と私の幸せな未来だった。

< 136 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop