君をひたすら傷つけて
 受験日と言うのはどうしてこんなにも天候に恵まれないものなのだろうか?その日も例年になく寒い朝を迎えていた。

 この頃、少し気温も上昇し、春めいた日が数日続いたからか、今朝の寒さは身に沁みる。どうして大事な日なのにこんなにも寒いのだろうかと嫌になる。でも、ベッドサイドに置いている棚には義哉から貰ったお守りが置いてあるのを見ると、私はベッドから起きて窓のカーテンを一気に開けた。

 寒いけど綺麗な空だった。


 それにしても寒い。

 自分の部屋は時間になったら暖房が入るようにセットしてあるのに、どうもいつもの時間にタイマーは動いたみたいだけど、温もりが足りない。気候なんて思い通りにならないと分かっているのに、少しでも試験がある今日という一日が暖かい日であって欲しいと思う。


 大学入試は長い人生からみると一つの通過点に違いないけど大事な通過点だと思う。私にとって勝負の時間だった。

 私は試験を受けるために制服を着るとゆっくりとリビングに行く。リビングのドアを開けて分かるのは私だけが緊張しているわけではないということだった。私よりもお母さんの方が緊張しているようにさえも見えた。でも、緊張を隠すようにお母さんは微笑んだ。


「おはよう。よく眠れた?」

「うん。大丈夫」


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