君をひたすら傷つけて
第四章

新たなる時間

 義哉が亡くなって私の生活は一変した。家族を心配させたくなくて私は平静を装っているけど、ふと、何かのタイミングで義哉のことを思い出す。仕方ないと自分でも分かっているけど苦しいのには変わりがない。


 私はこの後どう生きて行けばいいのだろうか?一人で生きていくことが出来るのだろうか?

 そう自問自答する。でも、まだ義哉が亡くなって日も経ってないから答えはまだ出る気配はない。亡くなった時も辛かったけど、それ以上に時間が経つほどに痛みは消えるどころか、痛みを増していくような気がしている。義哉の居ない毎日は私の想像以上に心を蝕んでいく。

 ふと思い出し、涙を零していた。

 私を心配していたからこそ、義哉は付き合うこと。好きということを認めることに躊躇していたのだろう。ひたすら傷つけるという意味を私は知ってしまった。

 だからと言って義哉と出会ったこと。恋をしたことを後悔してない。ただ、今もまだ恋をし続けているだけだった。
 
 春のある晴れた日。私は大学生になっていた。

 義哉が亡くなった後に届いた封書は私の大学合格を知らせるもので、第一志望の大学に合格し、そして、桜の花が咲き零れる頃にその門を潜った。

 溢れる人の波。行き交う笑顔に勧誘の嵐。

 そんな大学の雑踏も妙に冷静に見てしまう。新しい生活が始めないといけないのに、私の心は沈んだままだった。手にあるたくさんのサークル勧誘のチラシを見ながら、私はまだ踏み出せない自分を感じていた。


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