君をひたすら傷つけて
 義哉は私が好きだと言っても、幸せに出来ないからと中々頷いてくれなかった。でも、思いが通じ合って、付き合うと言うことになった時に義哉は私を『大事にする』と言ってくれた。レンジ先輩の『大事にする』と言った言葉はあまりにも違う。

 同じ言葉のはずなのに重みが違う。


「ありがとうございます。でも、恋はするつもりがないので」


 そう応えてもニコニコ笑うばかりでお酒の勢いなのかグイグイと寄ってくる。こんな風に男の人に寄られるのを怖いと思ってしまった。


「そんなに堅苦しく考えなくていいよ。一緒に居れば俺のことを好きになる」


 絶対に好きになれないと思う。私が好きなのは…真摯に生きていた義哉だけ。

「レンジ。そろそろいい加減にしようか」


 そんなレンジ先輩から助けてくれたのは女の先輩だった。グイグイと私とレンジ先輩の間に入ってきて、私の方にニッコリと微笑む。


「おい。しずか。今、話している最中だろ」

「藤堂さん。あっちで話しましょ。二年の子もいるから」


 レンジ先輩は思いっきり無視で…。チッと舌打ちを残して、結局はレンジ先輩はさっきの女の子の中に帰って行った。そんな後ろ姿を見ながらしずかさんはフッと笑った。


「ごめんね。レンジも悪い奴じゃないんだけどね。寂しがり屋なところがあるから、女が切れないのよ」
 
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