君をひたすら傷つけて
 女の先輩の話を聞いていてもしっくりこないというのが本音だった。寂しがり屋だから女が切れないと言う風には見えない。

「いえ。大丈夫です。ちょっと吃驚しましたけど寂しがり屋なんですか?」


「そうよ。男のくせに一人でいることが出来ないから傍に誰かいて欲しくてコロコロ女を変えているの。一人の女だけを大事にすればいいのにねって思うけど、レンジを受けとめるだけの許容範囲の広い女の子はいないからね」

「あの…申し訳ないですが、名前を伺ってもいいですか?」

「瀬戸しずかっていうの。藤堂さんの一つ上で三年生よ。これからよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

「堅苦しいのは抜きにして皆のところに合流しよ」

「はい」

「緊張してる?」

「はい」

「これから少しずつ慣れたらいいから」

「はい」

 あまり気乗りのしなかった新歓コンパだけど、全く来る意味がなかったと思うとそうではなかった。みんなの集まっているところに瀬戸先輩と一緒に向かっていると、少しだけ自分の世界が広がっていくのを感じていた。そして、女の先輩が固まっている場所にはいると、瀬戸先輩だけでなく他の先輩も話しかけてくれる。

 とっても楽しい時間だった。

 時間は思ったよりも楽しく過ぎ、コンパが終わり店を出ると明確な二次会は決まってなくて思い思いに流れていく。

 そんな中、私は帰ろうと思った。とりあえず、瀬戸先輩にだけは挨拶してから帰ろうとすると急にレンジ先輩に横から腕を掴まれた。
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