君をひたすら傷つけて
「彼氏来るの?」

「近くで仕事しているそうです。十分くらいで来てくれるとのことです」

「雅ちゃんの彼って社会人なの?」

「まあ、あの…そうです」

 レンジ先輩の質問は完全に好奇心に変っていた。呼びに来た他の先輩には先に店の行くように言うと、店の近くで私と並んで待っている。

「彼のこと好き?」

「何でそんなこと聞くんですか?」

「彼氏が居るように見えないから」

 ちょうど十分くらいが過ぎた頃、店の前にお兄ちゃんの車が停まった。そして、すぐに車から降りてくると私の横にいるレンジ先輩をチラッと見てから私の方に視線を向けるのだった。お兄ちゃんはスーツでさっきまで仕事をしていたというのがアリアリな状況で申し訳なさでいっぱいになる。

「俺の部屋で待っている約束だったろ。何かあったのか?鍵を忘れたか?」


 お兄ちゃんの言葉に私の頭に?マークがたくさん飛ぶ。お兄ちゃんの部屋で待つ約束なんかしてないし、実際にお兄ちゃんの部屋に行ったことさえない。鍵なんか渡される理由もない。


「俺、小暮レンジと言います。さっきから雅ちゃんを口説いているんだけど中々俺の方を向いてくれなくて…。で、彼氏が居るっていうから嘘だと思ってました。本当に居たんですね」


「今日は仕事が遅くなるから部屋で待っておくように雅には言っていたんだ。これで納得してくれたかい?」


「でも、本当は兄弟とか従兄妹とかではないんですか?」
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