君をひたすら傷つけて
 レンジ先輩の言葉にドキッとしてしまった。

 本当の兄妹ではないが、それくらい大事にはして貰っている。チャラくて遊び人風なのにレンジ先輩は鋭い。真実を指摘された私の心臓はドキドキどころかバクバクと音を立てている。何か少しのショックがあれば倒れてしまいそう。でも、お兄ちゃんは全く驚いた気配はなかった。

「雅は大事な女の子だよ。それじゃダメかい?」

「付き合っているんですか?」

「付き合っている証明でもしないといけないのかい?目の前でキスでもしたら納得はするかもしれないけど社会人にもなるとこんな往来でそんなことは出来ないし、ましては見せるものでもない。大事な女の子なんだ。そのくらいは大学生の君でもわかるだろ。お酒の勢いとかで大事な子を傷つけるのはどうかと思うよ」

「すみません。軽率でした」

「分かってくれたらそれでいい」


 お兄ちゃんの言葉にレンジ先輩は静かになってしまった。正論で言われると何も言い返せないのかもしれない。これで全て終わったと思ってお兄ちゃんを見上げるとニッコリと笑った。


「雅。マンションの鍵を持って来ているよな?」

「え?」


 持っているも何も貰ってない。というか…どこまでお兄ちゃんは話を膨らませるつもりだろう。彼氏が居るというよりはマンションを合鍵で行き来しているようにさえ取れる言葉が続いた。
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