君をひたすら傷つけて
 お兄ちゃんの車を見送りながら横で盛大な溜め息を零したのはレンジ先輩だった。溜め息を吐きたのは先輩ではなくて私の方だと言いたかった。

「雅ちゃんには驚かされたよ。まさかあんなオトナの社会人の男と付き合っているとは思わなかった。でも、よかったな。あんなに真剣に思われているんだからな。学生と社会人の恋愛なんて上手く行かないと言いたいところだけど、あの人は大丈夫だよ」


「え?なんでですか?」


 レンジ先輩の言っている意味が分からない。お兄ちゃんは優しいけどそれは義哉を失っての私が危ういからであって、レンジ先輩のいう意味とは違う。


「それくらいわからないのか?雅ちゃんって思ったよりも何も分かってないのかもしれないよ。周りから見たら羨ましがられるくらいに大事にされているし、怖いくらい威嚇されたし。さてと、フラれた俺は誰かに慰めて貰いに行こうかな」


 そういうとニッコリと笑ったのだった。悪い人じゃないみたいだけど、ちょっと言葉が軽く感じてしまうところが瀬戸先輩の言っていたのも当たっている。


「じゃあ。今からは先輩後輩ということで。で、先輩としてはこんな場所に可愛い後輩の雅ちゃんを置いていくわけにはいかないのでとりあえず駅まで送るよ」
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