君をひたすら傷つけて
「いえ大丈夫です。一人で駅まで行けますし」

「遠慮しないでいいって」

「でも、お友達と飲むんでしょ」

「そ、飲むの。でもさ、可愛い後輩に何かあったらと思ったら美味しいお酒は飲めないでしょ。さ、さっさと歩く」

 そんなレンジ先輩の声に動かされるように駅までの道を歩き出した。駅までは一本道で行き方は分かるけど、騒がしい街の中を歩くときうことを想像してなかった。酔った人が行き交う場所は少し怖い。レンジ先輩が隣にいても、酔ったオジサンたちがいきなり話しかけてきてビクッとなってしまう。そんな私を見ながらレンジ先輩はクスクス笑っていた。


「俺がいるから大丈夫だよ。これでも空手の有段者だし。それにしてもあんな大人な彼氏がいるのに、男慣れしてないね」


 そういうとレンジ先輩は目の前で拳を握り、空を打つような姿勢を取り、風を切るかのような拳を打つ。その綺麗な型によくは分からないけど無駄のない綺麗な動きだと思った。


「よくは分からないけど、何かあったらお願いします」


「任せとけ。それにしても雅ちゃんの彼ってかなりの強者だよな。年上というだけじゃない迫力に驚いたよ。久しぶりに背中に冷たいものが流れた」
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