君をひたすら傷つけて
 肌には汗がじんわりを滲み、薄いブラウスは肌に張り付く。そして、いつしか珠のように首元を流れるほどになっていた。暑い陽射しは容赦なく私に照り付け、じりじりと焦げるように肌が焼かれる気がする。帽子を持ってくればよかったと後悔してしまうほどだった。

 何度も通った義哉が眠る場所は今日は一段と明るい光の中にある。

「義哉。元気にしてた?」

 ふと義哉を見つめるとそこには綺麗な花が供えてあった。この暑さの中でも真っ直ぐに太陽に向かっている花だった。まだこの暑さの中でも萎れていなかったので、この数時間の間に供えられたのだろう。太陽に向かって咲くひまわりが鮮やかに色を添える。そして、手の中にある花を見つめるを顔が緩んだ。

『まさか、同じ花なんて…』


 お墓に既に供えられてある花も私が買ってきたのもひまわりだった。初夏に咲く花の中で一番元気をくれそうな花だった。そんな明るさを義哉に届けたかったのに先を越されていた。

 お兄ちゃんだと思う。

 既に供えられている花の横に私も買ってきた花を供え、お墓の前に座ると目の前の墓石を眺める。刻まれた義哉の名前を見ながら目を閉じて手を合わせた。


『明日からフランスに行ってくるね。私も一歩だけ前に歩いてみようと思っている。今までと違った生活で大変だと思うけど頑張るから応援してね。今度、会いに来る時には私は今よりも素敵になって帰ってくるから』


 そんな言葉を心の中で呟くと、私は立ち上がる。真っ直ぐに見つめ、そっと太陽の光で温かくなった墓石にそっと手で触れると温かくて、義哉が『雅なら大丈夫』と言ってくれているように感じた。心の中で義哉は生き続けるから大丈夫。振り返るとひまわりの黄色に包まれた義哉のお墓は眩かった。
< 211 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop