君をひたすら傷つけて
 私は持ってきたスーツケースの中から、身体を締め付けない普段着に着替えると日本から持ってきたお土産を持ってリビングに行くことにした。まりえさんとリズさんには日本から美味しいと言われるお菓子を持ってきた。フランスのパリはお菓子などのスイーツも充実しているから、下手なものは持ってくることは出来ない。そこで私が選んだのは日本伝統のお菓子。

 せんべいだった。それもしょうゆ味の素朴なもの。

 喜んで貰えるか分からないけど、選んだのは私が大好きなおせんべいだった。


 着替えを終わらせて、日本から持ってきたお土産を持ってからリビングに行くとソファにはリズさんと真っ黒な髪が印象的な女の人が座っていた。二つに結んで垂らした髪が真っ直ぐで綺麗だとつい見とれてしまうほどの日本的な美しさだった。リズさんと一緒に楽しそうにしているのをみるとこの人がまりえさんだろう。

 まりえさんは濃紺のシンプルなパジャマの上に厚めのショールを羽織り、湯気が上がっているマグカップに口を付けている。顔がまだ少し赤いから熱があるのかもしれない。それなのに、部屋から出てきた私の姿を見ると可愛らしくニッコリと微笑んだ。そしてテーブルにマグカップを置くとゆっくりと立ち上がって手を差し出した。


「藤堂雅さんよね。金谷まりえです。まりえって呼んでね。それと今日は空港に迎えに行けずにごめんなさい。少し体調が悪くて」

 私はその白い手に自分の手を重ねるとその熱さに驚く。かなりの熱がある。ニコニコしているけど、本当は寝てないといけないのではないのだろうかと思うほどだった。
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