君をひたすら傷つけて
 実際に風邪を引いているからか、まりえさんの顔はぽっと頬を染めている。少し身体がキツイのか、動きも緩やか。まりえさんと視線が合うと少し赤らめた顔で私の方を見てニッコリと笑う。まりえさんの顔を見ていると、リズさんの言った通りに大和撫子で可愛くて清らかに見えて騙されているとは思えない。化けの皮なんかありそうもない。

「まりえが普通の大学生だったら、この世の中馬鹿ばかりになるわ」

「普通よ。私」

「才色兼備で眉目秀麗。非の打ちどころのない優等生が普通とかいうと、恨まれるわ」

「リズ。私を持ち上げても何も出ないわよ」

 言葉の端々に意志の強さが垣間見える??リズさんの言葉が本当???頭の中で踊る疑問符。

「まあ、私は雅とまりえと楽しく過ごせたらそれでいいわ」

「それは私もよ。私も雅さんとリズと一緒に楽しく過ごしたいと思っているから」

 リズさんもまりえさんも優しいから新しく始まる生活は何も心配しないでいいような気がした。私の方こそ、リズさんとまりえさんと一緒に楽しく過ごせればと思う。

 二人の話を聞いていると楽しそうのじゃれているように見える。二人とも楽しそうだった。

「雅も座って。雅のコーヒーの好みは?ブラックじゃないわよね。お砂糖は?ミルクは?」


「ミルクだけで」

「うん。分かったわ。じゃあ、座って待っててね」
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