君をひたすら傷つけて
 リズさんはコーヒー豆を見るで引くと丁寧にハンドドリップする。その優美な動きに私は目を奪われていた。ただ単にポットからお湯を注ぐのではなく、綺麗な円を描くように細いお湯の筋を注ぐ。そして、泡が消える前にドリップを止め、ガラスのサーバーには濃茶の液体が嵩を増していく。

 リズさんは出来上がったコーヒーにミルクを入れてマグカップに注ぐとそれを私の目の前に置いてくれた。マグカップの色はピンクでまりえさんはグリーン、リズさんはパープルのマグカップをそれぞれの前に置く。マグカップはパステル系ではなくて全部ビビットカラーだった。私のはショッキングピンクだったから、目に眩しいくらい。でも、形がコロンとしているから可愛らしい。


 今までの私なら絶対に選ばない色だけどこういうピンクも嫌いじゃないと新鮮に思った。


「ありがとうございます。いただきます」

「どうぞ。そのマグカップは雅専用ね。共有の食器は全部白なんだけど、それじゃ余りにもテーブルが寂しいから、雅がここに来るから私とまりえで買ってきたのよ。色はわたしとまりえで一緒に選んだの気に入ってくれるといいけど」

「嬉しいです。とっても」


「そう。よかったわ。まりえと二人でかなり悩んだの。で、結局決めたのはまりえよ」

「でも、その店を選んだのはリズでしょ。だから、二人で雅さんのために選んだのよ」


 リズさんとまりえさんは本当に仲がいい。一緒にいた時間は短いのに、二人の醸し出す雰囲気が柔らかく、私を受け入れてくれた。
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