君をひたすら傷つけて
 私はフランスに来て初めての夜を迎えようとしていた。時差もあるからかなり身体はきついけど、二人が楽しそうに話しているのをきいているだけでも嬉しい。言葉を選びながらもズケズケと物静かに言葉を発するまりえさんに少し低めの声でテンション高く話しているリズさんが漫才のように話していて面白い。

 二人は私よりも一か月くらい前からここに住んでいるらしいけど、この二人の親しさは群を抜いている。二人の話や口調を聞いていると昔からの友達みたいだった。しばらくしたら私もこの二人と一緒にこのように話すのだろうか?でも、出来ればそうなって欲しい。少し話しただけだけど、私はリズさんもまりえさんも好きになっていた。

 私は二人の話を聞いているとまりえさんが私に向かって可愛らしく微笑んだ。

「ごめんなさいね。リズが煩いでしょ。リズはいつもヒートアップするのよ」

 まりえさんがそういうとリズさんはムッとした顔をして、私に視線を向ける。綺麗な顔を向けられると迫力に身を引いてしまう。美人から迫られると身体が自然に後ずさってしまう。

「雅はどう思う?私が正しいと思う。それともまりえだと思う。こういう時は第三者の意見を聞くに限るのよ。私が煩い?それともまりえが煩い?」


 そう詰め寄られても困ってしまう。二人の話している内容は今日の夕ご飯のことで煩いというよりは仲が良くて羨ましいって感じだから。
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