君をひたすら傷つけて
 母からのメールは既にかなり時間が過ぎたものだった。フランスに着いて落ち着いたら連絡して欲しいとのことだった。私は自分の事でいっぱいでフランスに着いて家族に連絡をしてなかった。空港からずっと必死で全てが抜け落ちていた。

 アパルトマンに着いた時に連絡をしておかないといけなかったのに、忘れてしまっていた。とりあえず『無事に着きました。時差がきついので寝ます。』それだけを送信した。明日にでも落ち着いたら電話でもしようと思う。

 そして、お兄ちゃんからのメールを開くと胸がキュッとなり涙が零れそうになった。メールには無邪気に笑う義哉の笑顔があり、そして、その写真と一緒にお兄ちゃんからの短いコメントが添えられてあった。


『頑張れ』

 たったこれだけの言葉だけど、その言葉にお兄ちゃんの思いが込められているのを感じた。私が知らない土地で始める生活を応援してくれている。そう思うと言葉の通り頑張らないといけないなって思う。

 それにしても携帯の画面の義哉はなんてこんなに楽しそうに笑っているのだろう。初めて会った時よりは少し幼いようだった。無邪気な微笑みが私を見つめていた。
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