君をひたすら傷つけて
 生まれた時から身体が弱かった義哉はこの無邪気な微笑みの時にも身体には病気を抱えていたはず。ずっと苦しい病気と闘ってたのに写真の中の義哉は誰よりも幸せそうに笑っている。

 会いたいと思った。
 声を聞きたいと思った。

 好きだと思った。
 誰よりも好きだと思った。

 私は携帯を抱きしめると涙を頬を伝う。日本を離れても私は義哉のことを忘れられない。


「義哉、好きだよ」

 そんな言葉を呟くと、胸の奥にチクリと甘い痛みを感じさせた。私のこの思いは天国にいる義哉に届いているだろう。一年という時間が経っても私の心の中には今も義哉がいる。一生消えない微笑みが私は包み込んでいた。

 そんな義哉の写真を見ながら私は静かに心に誓った。

 義哉が出来なかった分、私は色々な場所に行き、たくさんのことを見て経験していく。それは遠い未来にもう一度出会った時に義哉に話すことが出来ればいい。

 フランスでの初めての夜。シャワーを浴びた私は自分のベッドで静かに目を閉じた。閉じると目蓋の裏には義哉の優しい笑顔を私を大事にしてくれているお兄ちゃんの笑顔が浮かんでいた。

『お兄ちゃんは何をしているのだろうか?』

 そんなことを思った。メールの返信には迷った。
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