君をひたすら傷つけて
 毎日は忙しく学校とこのこの部屋との行き来だけで私には精一杯だった。日本から渡仏する時はこちらでアルバイトでも出来ればいいと思っていたけど、それは思ったよりも難しいと分かった。まずは言葉の問題。そして、後は気持ちの問題だった。私にはリズとまりえと一緒に話すことは出来ても学校でも社交的にはなすなんて出来ないし、まだ来たばかりだからと自分に甘えている部分もあった。 

 学校から戻って部屋で今日習ったことを復習しているとドアがノックされリズが入ってきた。真っ白なシャツに黒のパンツをはいているから仕事に行くのだろう。

「雅。今日はもう学校はないよね」

「うん。今日はもう終わりよ。まりえは?」

「まりえはまだ帰ってきてないの。学校で何かあったのかも。あのさ、雅のお願いがあるの。今から仕事なんだけど、アシスタントが一人急病で人手が足りないの。雅。手伝ってくれない?」

 リズの仕事はヘアメイクまでこなすスタイリストで、雑誌の撮影から本格的なファッション系のコレクションまで仕事の幅は広い。勤めていた事務所を独立してフリーで活躍している。だから出来るだけ助けてあげたいと思うけど簡単に出来るものではないくらいは分かっている。どう考えても私には無理だった。

「無理よ。だって私。何も分からないもの」

「まりえをモデルにして私が練習しているでしょ。その時にピンを取ってとか、ブラシを取ってとかお願いしてるでしょ。それとそんなに変わらないからお願い」
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