君をひたすら傷つけて
 私はリズの指示の通りに身体を動かす。衣装を着せて、リズの作った髪型が壊れてないか、化粧が剥げてないかとチェックする。もしも乱れていたら、その都度、リズに直して貰う。最高に美しい状況を作ってからステージに送り出すと次のモデルが控えている。

 ステージから聞こえる音楽は優雅なのに、バックヤードのスタッフは激しく動いている。そこに優雅さの欠片もない。モデルもプロだからか、衣装を着る際に、恥ずかしげもなく一気に肌を晒す。透け感のある生地を使った衣装は身体が透けて見えるがそれさえも気にしない。

 モデルは自分の身体の美しさと表現力を持ってステージに立つ。そんな彼女たちの姿をみて、凄いと思った。どれだけ綺麗に衣装を着こなすかというこの一点だけにみんなが動いていた。待ち構えていたアシスタントというものはこんなに過酷なのだと私は身に染みた。

「雅。次の衣装」

「雅、そのモデルのチークが少し薄いから足して」

「その衣装は一番上までボタンは留めないで。胸の谷間が強調されるように」

 何も分からない私はリズの指示に従うことしか出来ない。でも、出来るだけリズの力になりたくて必死だった。指示を受けないと何もできない私は自分がもどかしいけど、それでも言われたことくらいは出来る。リズも素人の私が動きやすいように細かなところまで気を配り、指示をくれていた。
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