君をひたすら傷つけて
 私なりに頑張り、必死に身体を動かしていると時間だけは飛ぶように過ぎていく。緊張に包まれたコレクションはあっという間に終わり、モデルとスタッフとそしてデザイナーとが輪になって互いに抱き合い、コレクションの成功を祝い合っていた。

 リズもその輪の中にいてデザイナーと抱き合い、お互いに成功を喜びあっていた。そんな姿を見ながら私はホッとする気持ちが強く、端の方の壁にもたれ掛り歓喜の様子を見つめていた。力を合わせてコレクションを成功させたというのはあまりにも大きな感動を私にくれた。

 コレクションの裏側はテレビで見るような華やかな世界ではなく、戦場の様に厳しさや激しさも持ち合わせている。でも、その中でも成功という一つの道に向かって歩く様は『生』に溢れていると思った。まだ、両手の指先には熱くたぎるものを感じさせる。


 指先がピリピリとしている感じが抜けない。生きているという感触を私は感じていた。感動し涙を流す行為がとても綺麗に見えた。


「雅。今日は本当にありがとう。助かった」

 人の波をスルリ抜けてリズはいつの間にか私の前に来てくれていた。自分の前に出来た影を見上げるとリズは少し泣いたのか目を真っ赤に染めている。そんなリズを私は誇りに思った。

「リズは凄いよ。本当に」
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