君をひたすら傷つけて
 リズはこういうコレクションを主催する会社に勤めているスタイリストだった。有名な会社でそのままでも十分な成功だと言えた。でも、自分の立場が上がることによる窮屈さから独立を選んだ。

 どうしても自分の思い通りに仕事をしたくてフリーで動くことにした。合理主義の会社は合わずにその人の合うものをどうしても選びたかったのだとリズは言う。そのままでも十分な仕事が出来たと思う。

 でも、リズは妥協しなかった。

 それが安かろうと、高かろうと…。スポンサーとかの縛りがないものを…。でも、それは厳しい道だったと思う。理解者は少なく、少数精鋭と笑いながらいうけどリズはリズなりに苦労していると思う。そんな中で勝ち取ったのが今回の仕事でリズは周りの期待以上にやってのけたのだろう。

 アクシデントをカバーするだけでなく。リズのスタイリングが冴えた。

「私だけじゃできないわ。アークスもだけど、今日は雅に感謝よ。本当にありがとう」

「私こそリズに感謝している。こんなに生きていると感じたの久しぶりなの。指先がピリピリするくらいに生きているって感じたの」

『生きていると感じる。』

 その言葉に私は自分でも吃驚した。このピリピリするような感覚は生きていると実感してるから…。もしかしたら、義哉が亡くなってからこんな風に自分は生きているんだと思うのは初めてかもしれない。自分の指先を見て、キュッと握る。

 私は生きている。
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