君をひたすら傷つけて
 私は自分の椅子に座るとまりえがお母さんのように朝食の準備をしてくれ、リズはというと片手にタブレットを持ち何かを打ち込んでいた。

「パンとサラダとスープと卵でいいかな?」

 誰が決めたというのではなく時間がある人が食事を作るようにしている。もちろん私も作るけど、朝は手際がいいまりえが用意することが多い。夜は私とリズが時間がある方という感じだった。

「うん。いつもありがと」

「いいのよ。自分のを準備するついでだから」

 ルームシェアと言っても本来ならば、こんな風にルームメイトと親密に生活を共にする必要は無い。でも、まりえとリズの生活スタイルを私も気に入っている。プライベートを守りつつ、一緒に楽しむというのはいい。一緒に住むのが二人でよかったと心から思う。

「ありがとう」

「リズは二日酔いだからコーヒーだけでいいらしいわ」


 目の前に座るリズを見る限り、少しの疲れは感じさせるけど二日酔いには見えない。でも、まりえがいうのだから、そうなのだと思う。考えてみれば、あれだけの大きなコレクションを成功に導いたのだから、あの後どのくらいの盛り上がりの中にパーティが行われたのか想像は容易だった。

 シャンパンが何本も空になり、瓶が並んだのも想像出来る。ここはシャンパンの本場のフランスであり、コレクションにくるようなハイソサエティな人は安価なワインを口にすると思えない。

 シャンパンにしろ、ワインにしろ美味しい。美味しいが故に飲み過ぎることもある。

 ひどくないといいのにと思った。
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