君をひたすら傷つけて
「玄関に置くと邪魔だから自分の部屋に持って行ってね」

 まりえは顔には綺麗な微笑みを浮かべているのに口に出す言葉に毒を含んでいる。それには理由があった。リズの部屋は仕事で使う小物などで一杯でたまにみんなの共有の場所に溢れてくる。リズも自分の事務所を持っているけど荷物を増やす。これが初めてではなかったからだった。

「素敵な服があるわよ。まりえに似合うと思う。もちろん、雅にも」

「ありがとう。でも、それとこれとは違うから」

「わかった」

 素敵な服と言ってまりえの許しを得ようとしたリズは見事に玉砕した。リズは玄関に戻り、大きな紙袋を何個も持ってくる。これが玄関やリビングに置かれるとドアが閉まらなくなる可能性もある。まりえの方に分があった。でも、リズも仕事だし、少しならアパルトマンに置いていてもいいかなって。


「リズの部屋に入らない分はリビングの端に置いておいたらいいじゃない」

 まりえの視線が私に注がれる。いつもは優しいのに、こういうことはキチンとしているというかし過ぎている。真っ直ぐに見つめられると息が止まりそうになった。

「雅は優しいわ。でも、これはダメよ。ここは共同生活をしているから節度を持った生活をしないといけないの。仲良くするのはいい。でも、仲がいいからといってなんでも許すのは違うと思わない?」




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