君をひたすら傷つけて

　まりえの言葉は正論。でも、少しくらいと思う気持ちが私にはある。でも、横にいリズを見ると、視線を床に漂わせている。並んで諭される私とリズはまるでお母さんに怒られた子供の様だと他人事のように思った。

「まりえの言うとおり。荷物は自分の部屋に置く」

　そう、リズが言うとまりえはいつも通りに優しい微笑みを浮かべた。そして、零した言葉に毒はもうなかった。

「リズ。食事はどうする？今日は雅が和食を作ってくれているわよ」

「食べる」

　リズが無言で自分の部屋に荷物を入れると、そのままテーブルに座ったのだった。

　並んで食事をしながら、リズは今日持って帰ってきた荷物について話し出す。今回は雑誌の撮影に使う小物が主な荷物らしいけど色合いが気に入らないらしい。かといって、色合いを選ぶと、素材の雰囲気が合わないという。雑誌には素材の雰囲気とか伝わらないと思うけどリズは仕事に妥協がない。

「よくは分からないけど、気に入らないなら身を粉にして探すしかないんじゃないの？」

「それは分かっているけど、自分で探すのも大変なのよ。パリの店を全部回るわけにはいかないでしょ」

「なら妥協しないと」

「それは出来ない。食事が終わったら少し付き合ってよ。まりえと雅の意見が聞きたい」