君をひたすら傷つけて
 まりえが部屋に入ってしまうとリズはソファに身体を預け、目に手を押さえていた。何度も着替えたまりえもきつかったと思うけど神経を張り詰めていたリズも疲れているみたいだった。それでもドレスとアクセサリーの組み合わせを殴り書きしていた紙をテーブルから集め、真剣な顔でまた見つめている。

「リズ。コーヒーでも淹れようか?」

「お願い」


 私はコーヒーを淹れることにした。リズは特に疲れている時は濃いめのコーヒーを好むのを私は知っている。本当ならこの時間に濃いめのコーヒーは身体によくないけど神経が昂ぶった時に切り替えとしてはいいと思う。

 半年の間に随分、まりえとリズのことが分かるようになっていた。


 家族以外と一緒に住むのは初めてで…最初は躊躇した部分がないとは言えない。でも、半年の間の時間は確かにあって、私がリズにしてあげられることが分かるようになっている。そんな私の耳に届いたのはリズの静かな声だった。

「雅の淹れてくれたコーヒーが美味しい」

「よかった」


 こんな風に一緒に過ごす時間は少なくなっている。

 まりえの留学は二年だけど私は一年だから私の方が先に帰国することになる。

 そう思うと寂しい。

「いい仕事が出来たわ。今度の撮影はスムーズにいきそうよ。遅くまで付き合ってくれたまりえと雅のおかげね。ありがとう」
< 265 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop