君をひたすら傷つけて
「まりえはいいモデルだと思う。でも、私はリズの言葉ほど役には立ってないと思う。でもね、リズの仕事を見る度にドキドキする。リズのセンスって好きよ。組み合わせが素敵。私がそこは黒がいいのではないかって思った時にリズが選んだ淡いブルーが映えたりするから、さすがって思う」

 私の脳裏にリズのコーディネートが色濃く残っている。シンプルな中に一筋の風が吹いたかのように爽やかで大人の雰囲気の中に少女のようなあどげなさを表現する。足したのは少しの色だったけどそれがいい。

 リズのセンスにドキドキする。

 リズは私の方を見つめ フッと軽く息を吐いた。コーヒーの入っているマグカップはテーブルの上に置くと視線はとても真剣だった。


「雅はそんなことを考えながら私の手伝いをしているの?」

「クイズとかを当てるという感じかな。でも、とっても楽しい」

「楽しいって本当に大事なことだと思うわ。さてと、もう少し仕事をしないと」


 リズはソファから立ち上がるとパソコンを持って来て、テーブルで仕事をし始めた。紙の束をパソコン内に整理していく。マグカップを片手にパソコンのキーボードを軽やかに押していった。まりえをモデルにして、たくさんの写真を撮ったものの整理とそれに関してコメントを入れて行く。服だけのデータではなく、色々な組み合わせも整理し始めていた。

 このパソコンの中にはリズの才能の欠片が詰まっている。色々な経験をデータベース化していて仕事に役立てる。ただのデータで終わるかもしれないし、もしかしたら、どこかの雑誌で同じような組み合わせを使うかもしれない。リズがキーボードを叩く音を聞きながら、コーヒーを飲むのが私は好きだった。


 不意にリズは手を止めると何か言いたげで…でも、中々言葉にしない。

「ねえ、雅」
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