君をひたすら傷つけて
 リズの言葉を信じでないわけではない。でも、親からファッション関係の専門学校に行くだけのお金を用意して貰えたことが随分心を楽にしてくれた。語学留学後もフランスにいることは出来る。お母さんが大学は休学にして日本に帰国して行きたいと思ったら行けばいいし、行きたくないと思ったらそれでもいいと。

 親もお金の面もクリア出来ると急に現実が押し寄せてきた。

 残された少ない留学期間は無期限に伸ばされることになるかもしれない。

 リズのアシスタントの仕事をする度に、自分がこの仕事が好きだった。一年という留学期間は私の中では長いと思ったのに、後、二か月もすれば、帰国するなら手続きもしないといけない時期になっていた。それなのに私は留学期間を延ばそうと思っている。

 ファッションの仕事が好きという気持ちが増えていて、ただのバイトではなく、前よりも真剣にリズのアシスタントをしていた。でも、心配はある。

「もう決めたの?」

 そう聞いてきたのはリズではなくまりえだった。リズは仕事でまだアパルトマンには帰ってなくて、ここにいるのは私とまりえだけだった。

「両親は好きにしていいって。私は周りが整い過ぎて怖い」

「怖い?」

「私のことだからか、両親も反対しなかった。学費も援助してくれるっていうし、リズも学校も仕事も全面的にバックアップしてくれるというの」

「いいことだと思うけど?」

「そうなんだけど」

「自分の気持ちがどうしたいかが一番よ。雅が決めることよ。だって、雅の人生ですもの。でもね、私はもう少し一緒に居られるのなら嬉しいわ。リズと雅との生活は楽しいの」

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