君をひたすら傷つけて
「雅のいうとおりだよ。もし、俺が相談されていたら、反対していたと思う。だって、最初の留学は一年と期間が決まってた。でも、今度は違うんだろ。もしかしたら、雅のこれからの拠点がフランスになるかもしれないということだろ。」


 お兄ちゃんに言われてハッとする。


 もしも、こちらでファッションの勉強をするなら、フランスはファッションの本場でもある。もしかしたら、仕事もこちらですることになるかもしれない。リズの会社の本拠地もパリにある。私も先は分からない。


「わからないわ。でも、頑張りたいの。」



 お兄ちゃんに私の気持ちは届くのだろうか?でも、お兄ちゃんには私のこれからも応援して欲しい。これが甘えだと分かっている。


 それでも、私は…。



 お兄ちゃんを説得したいと思う気持ちが上手く言葉にならない。頭の中で言葉を探していると、受話器から静かに優しい言葉が零れてくるのであった。



「ああ。最後まで頑張って来い。雅なら出来る。」
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