君をひたすら傷つけて
「ご飯はいい。お腹空いてないの。でも、カフェオレは飲む」

「じゃあ、カフェオレだけは準備をするわね」

 仕事に妥協の出来ないリズも仕事の前でもがいている私もまりえの前では肩の力が抜けてしまう。まりえの柔らかい雰囲気に私は癒されている。

「着替えてくる」

「そうね。そうして」

 まりえに癒され、私は自分に部屋に入ると窓から差し込む光を見つめた。

 季節は春になっていた。日本のように桜の花が咲くわけではないけど花に包まれた季節はどこか心を躍らせる。義哉が亡くなって三年の年月が流れ、私は21歳になっていた。机の中から一枚の写真を取り出し眺める。何度も見詰め、抱きしめた写真は私を惹きよせる。

 抱きしめた写真の中の義哉は包み込むような笑顔が眩い。その笑顔を見ると胸がチクリと棘を刺したように痛み、まだ、私の恋は終わってないと思わせた。時間は過ぎても私の中の一番奥底には今も義哉がいた。一緒に過ごした時間はたった二か月なのに、三年経っても色褪せることなく今も私は恋をし続ける。

『会いたい。義哉に会いたい』

 叶えられないと分かっている思いを口にする。記憶の中の義哉は思いだし過ぎて擦り切れそうになっていた。でも、私の恋はまだまだ続いている。あの時、私と義哉の心は同じ方向を向き、互いに思い合っていた。でも、今は…私だけが片思いしているみたいだった。
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