君をひたすら傷つけて
第五章

再会

 結局はその夜も起きることが出来なくて、リズが帰ってきても起きれず、起きれたのは次の日の朝、まりえが日本に帰国する前日になっていた。その日は朝から雨が降っていた。窓に流れる雨の筋を見ながら、まりえと最後に過ごす一日は晴れて欲しいと思ったのに残念だと思った。

 リビングに行くと、そこにはイタリアから帰ってきたリズとまりえが二人で並んでコーヒーを飲んでいる。リズは今日のためにイタリアから帰ってきたのだろう。三人で過ごす最後の日だった。

「二日酔いはどう?アルベールと一緒に朝まで居たんですって?それなら、アルベールの部屋に泊まってくればよかったのに。帰って来なくてもよかったのに。馬鹿よね。二人で二日酔いっていうのもいいかもよ。酔いから醒めて甘い時間を過ごすというのがよかったんじゃない?」

 リズは少し意地悪な顔をして私を見つめた。私がこんなにも寝込むことは初めてで…それも男の人と朝までワインを飲んでいたというのだからからかいたいのだろう。

「そんなことしないわ。アルベールは友達よ。その甘い時間とかって何かの小説?」

 すっかり酔いの醒めた私はリズの猛襲を軽く躱すことが出来る。昨日の私ならリズの言われるまま、言葉を探して困ったかもしれないけど、そんな私とリズのやり取りをまりえはクスクス笑いながら聞いている。

「アルベール・シュヴァリエ。これからの活躍が気になるモデルでクールな容姿とは裏腹にかなり優しい人」

 リズの言うとおりだと思う。今からが楽しみだと思うし、クールな容姿からは考えられないほどの優しさを秘めた人。一緒にいるととっても楽しいし、自分が大事にされていると感じる。

「そうね。とっても優しいわ。楽しい時間だったわ」

「で、雅の殻を破れるの?」
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